バイトして自らの愚かさを知った話①
引きこもり連続記録が7日目に到達しようとしていたころ、俺はふと自販機に行こうと思った。
それは喉が渇いていたとか、引きこもり連続記録をリセットしたかったとか、勉強する気になれなくてとにかく自室から逃げたかった、といった種々雑多な思惑があっての行動だった。
ところで3つの選択肢があった場合「前者」「後者」という表現はどう用いるのだろう。『中者(ちゅうしゃ)』という単語を勝手に作って3つに割り振ればいいのだろうか。
それならおそらく「後者」が一番強く作用しているのだろう、と思いながら逃げるように靴を履き、ドアを開けた。
久しぶりに感じた外の空気は澄んでいて──
なんて清らかな感想を抱くほど高尚な感受性は俺にはなく、ただただ花粉を恨みながらクシャミをしていた。
自販機は徒歩数分のところにある。
無事辿り着いた俺は一仕事終えたような顔つきでため息をついたのだが、財布を開いてもっと大きなため息をつくことになる。
万札しかなかったのだ。
千円札なら自販機で使えたものを──
福沢諭吉を恨んだのは初めてかもしれない。
大人しく、さらに徒歩5分ほどかけてコンビニに行くことにした。
(続く)